胎児スクリーニング
小さいな奇形も含めると、産まれてくる赤ちゃんの約3%には何らかの奇形があります。
中でも、命にかかわるような内臓の奇形については、妊娠中の超音波検査で見つけて、出産後から対応できる施設での出産につなげていく必要があります。
そのような妊娠中の赤ちゃんに対する詳しい超音波検査のことを「胎児スクリーニング」と言います。
検査方法としては、通常の妊婦健診と同様に、お母さんのお腹の上から超音波の機械を当てるのですが、より細かい部分まで観察できるモードで、いつもより時間をかけて、以下のような項目を観察していきます。
(妊娠中期に行う胎児スクリーニングですが、赤ちゃんの体の向きによって確認できない項目もあるため、それらに関しては以降の通常の妊婦健診を通して確認していきます)
頭部
超音波検査では、骨が白く映るため、頭蓋骨は綺麗な白い楕円形で確認できます。骨が欠けていないか、形がいびつではないかを確認したのち、頭蓋内の大脳のバランス、脳室(脳の周りの黒い部分)の拡大の有無、小脳の大きさ、小脳の背側にある大槽という部分の大きさをチェックします。
脊椎
二分脊椎という先天性疾患の有無を確認します。二分脊椎があると、産後に手術が必要となるため、専門の医療機関での出産が必要となります。
二分脊椎の確率を下げる方法としては、妊娠前から「葉酸」のサプリを摂取することが大切です。妊娠がわかってから飲み始めるのでは遅いので、妊活を始めた段階から飲むようにしましょう。
顔
唇が裂ける「口唇裂」の有無を確認します。
口唇裂 |
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唇の一部が裂けている先天性疾患です。胎児エコーにて、赤ちゃんの顔が真正面から見えると、妊娠中に見つける事が可能ですが、ずっと赤ちゃんがうつ伏せだったり、顔を胎盤や子宮の壁にくっつけた状態だと妊娠中に診断ができず、出産後に見つかることもあります。
口唇裂があると、うまく哺乳できないため、専用の哺乳器具を使ったり、ある程度成長したところで手術が必要になるため、対応可能な医療機関での出産になる事が多いです。
腹部
肺
肺の中に黒く見える嚢胞がないか、肺と腹部を隔てる横隔膜が欠けていないかを確認します。
心臓
全体的な大きさや向き、左右差のバランス、心臓に繋がる血管を確認します。
心臓に関しては、先天性疾患が見つかると、産後すぐに手術が必要となる場合もあり、非常に高度な医療が要求されるため、専門の施設での出産が必要となります。
総肺静脈還流異常 |
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極めてまれな疾患で、妊娠中に診断を付けるのも非常に難しい疾患ですが、出産直後から高度な対応が必要とされるため、できるだけ妊娠中に見つける事が大切な病態です。
肺から心臓へと戻る非常に細い2本の肺静脈は、本来であれば左房という部分に繋がっているのですが、左房に繋がってない場合があり、その部分を観察してきます。非常の細い血管のため、妊娠初期では見えないことも多く、中期以降でも赤ちゃんの体の向きではよく見えないこともあるため、一度のスクリーニングで確認できなかった場合は、以降の妊婦健診の中で確認します。
総肺静脈還流異常について(島根大学小児心臓外科HP)
胃
お腹の中の左側にあるか確認します。胃より先の腸が閉塞していると、胃が大きく拡張していたり、胃より手前の食道が閉塞していると、胃が確認できないことがあります。
また、内臓が左右逆になっていると、胃が右側にあったり、肺の部分で確認した横隔膜に穴が開いていると、そこから胃が肺の方に入り込んでしまうことがあります。
腎臓・膀胱
左右に一つずつある腎臓と、膀胱の大きさをチェックします。腎臓から膀胱へ繋がる尿管という管が閉塞している場合、上流である腎臓が拡張している所見が見つかる事があります。
臍帯
赤ちゃんのお臍に臍帯が繋がっている部分を観察します。
胎盤・臍帯
胎盤と臍帯が繋がっている部分を確認します。
臍帯が胎盤に繋がらず、卵膜という膜に繋がっている場合は、赤ちゃんに十分な血流が送られずに赤ちゃんが小さくなったり、出産時のストレスに耐えられずに赤ちゃんが苦しくなることがあるため、高度な医療機関での出産が必要になることがあります。