RSウィルスワクチン:アブリスボ
RSウィルスとは
RSウィルスは、生後1歳までに約半数、2歳までにほぼ全ての子供が感染すると言われるほどありふれたウィルスで、発熱や咳など、いわゆる風邪症状を引き起こします。
しかし、生後6か月までに感染すると重症化するリスクが高くなっています。
国内では、毎年12万人近い2歳未満の乳幼児がRSウィルス感染症と診断され、その約4分の1が入院が必要になると推定されています。
RSウィルス感染による2歳未満の乳幼児の入院は、生後1~2か月がピークとなるため、生後早期からの予防策が必要となり、その対策の一つとして、今回妊娠中に接種するRSウィルスワクチン「アブリスボ」が認可されました。
RSウィルスワクチン「アブリスボ」
効果
妊娠24~36週の接種による重症化予防効果は
生後90日以内:81.8%
生後120日以内:73.9%
生後150日以内:70.9%
生後180日以内:69.4%
と認められています。
日数が進むほど、やや効果は落ちていきますが、生後半年以内の重症化リスクが特に高いことを考えれば、かなり効果的なワクチンであることが伺えます。
仕組み
RSウィルスのウィルスが表面の膜上に持つタンパク質の抗原がワクチンに含まれています。
これを接種することで、妊婦さん自身の体内にたんぱく質の抗原に対する「抗体」が作られ、それが胎盤を経由して胎児に移行することで、赤ちゃんを感染から守る仕組みになります。
副作用
ワクチン接種群とプラセボ接種群を比較したデータです。
()内の数字がプラセボ群となります。
・接種部位の痛み:40.6%(10.1%)
・筋肉痛:26.5%(17.1%)
ワクチン接種は筋肉注射となるため、痛みを伴うことから、プラセボ群と比較して痛みの確率は高くなっています。
・疲労:46.1%(43.8%)
・頭痛:31.0%(27.6%)
・悪心:20.0%(19.2%)
・下痢:11.2%(11.5%)
・嘔吐:7.8%(7.0%)
・38度以上の発熱:2.6%(2.9%)
これらは、プラセボ群とほぼ同じ確率で起きているため、ワクチン特有の副作用とは考えにくいのですが、一定の確率で症状が出る可能性があります。
産まれた後の赤ちゃん自身への影響は、2歳までの評価で、特に問題を認めませんでした。それ以上の年齢での発達の評価などは、これから情報が集まっていくことになります。
値段
36,000円(税込・診察費込)
接種する時期
妊娠28週~36週の接種がお勧めです。
・接種後14日以内に産まれると効果がないと言われています。
・妊娠24週~28週の接種では、重症化予防効果が4~6割とやや落ちてしまいます。
RSウィルスに対する他の対策
妊娠中に接種するワクチン以外に、生まれた後の赤ちゃんに接種するものもあります。
シナジス(パリビズマブ)
RSウィルスに対してのみ作用する「モノクローナル抗体」というものです。ウィルスに対する抗体そのものなので、他のワクチン接種とのスケジュールには影響しません。
RSウィルス流行期に毎月1回接種することなりますが、保険適応となっても1回数万円かかります。(自費だと1回10万円以上)
対象者
妊娠35週までの早産児や、肺疾患・心疾患・ダウン症などのリスクを伴う赤ちゃんに限られます。
ベイフォータス(ニルセビマブ)
上記のシナジスと同様、RSウィルスに対する抗体のため、ワクチンではありません。そのため、他のワクチン接種とのスケジュールには影響しません。
シナジスと異なる点は、早産などのリスクを伴わない、すべての赤ちゃんが対象になっている点と、シナジスのように毎月接種する必要はなく、1シーズンに1回の接種で済む点です。
ただし、保険適応となるのはリスクを伴う赤ちゃんのみであり、リスクのない赤ちゃんでは自費での接種になります。
効果
1回の接種で、150日以内に受診を要するRSウィルス感染の予防効果:74.5%
費用
薬価が50mgで45万円、100mgで90万円となっています。。。
(保険適応であれば無料になる自治体も多いかと思いますが、自費での接種だと非常に高額になる可能性があります)