ミレーナ
3cmほどの棒を子宮の中に直接入れ、そこから染み出てくる黄体ホルモン(レボノルゲストレル)によって、生理痛を楽にする医療器具です。
ミレーナを入れることで、5年間は高い避妊効果が期待できます。一度入れてしまえば、5年間は有効なため、ピルの飲み忘れで困る方や、副作用でピルが飲めない方にとっては良い選択となります。
下から出産した経験のある経産婦さんであれば、子宮の出口がある程度広がっているため、比較的痛みが少なく挿入できます。
帝王切開しか経験のない方や出産経験のない方でも挿入は可能です。
麻酔なしで挿入した場合、10段階評価で3~4程度の痛みです。
(痛みには個人差があり、処置中の痛みの強さで挿入を断念した方もおられます)
※麻酔について
・局所麻酔:子宮に直接麻酔薬を注射しますが、その注射そのものも痛みを伴います。また、その麻酔をしても完全に無痛となる訳ではありません。
(静脈麻酔:眠った状態で処置が可能となりますが、麻酔が覚めるまで寝ていただくスペースが必要となるため、当院では対応できません)
有効期間
基本的には、ミレーナの有効期限は5年間とされていますが、それ以上挿入していた場合について検証したものはこちら。
5年以上経過したミレーナについて
5年間を過ぎても、8年程度までは高い避妊効果が認められているようですので、経過を見ながら交換時期を相談していく形となります。
費用
・過多月経、月経困難症がある方は保険適応となり、約12,000円(全国一律)となります。
・避妊目的の場合は、自費となるため、約60,000円となります。
(傍頸管ブロックという局所麻酔を併用することも可能です。ご希望時は院長外来をご予約下さい)
ミレーナの効果
生理痛が楽になり、生理の量も減る
黄体ホルモンには子宮内膜が厚くなるのを抑える効果があるため、薄い内膜が維持されることから、生理の量が減り、生理痛も楽になります。
排卵を抑える効果はないため、排卵後に起きるPMS(月経前症候群)を抑える効果はありません。
と言われてはいますが、実際にはPMSも良くなった、という方もおられるため、一概に「PMSには全く効かない」とは言い切れないのが実情です。
高い避妊効果
ミレーナに含まれる黄体ホルモンは、子宮内膜が厚くなるのを抑えるため、受精卵の着床を防ぎ、子宮内に精子が入るのを防いで、高い避妊効果を発揮します。
1年間に妊娠する確率は0.5%程度です。
ミレーナ装着時の注意点
ミレーナ挿入時にクラミジアや淋菌に感染していると、ミレーナと一緒に子宮内へ感染を広げてしまい、強い腹痛の原因となる事があります。
そのため、ミレーナ挿入前にはクラミジア・淋菌に感染してないか、事前の検査が必要です。
1週間後には結果が出るので、感染してないことを確認してから、ミレーナを挿入します。
他院でクラミジア・淋菌の検査を受けている方は、その結果を持参していただければ大丈夫です。
ミレーナ挿入時期
子宮内膜が薄くなっている状態で挿入したほうが、挿入後の不正出血のリスクが低くなるため、生理終わり際の挿入がお勧めです。
※以前に異所性妊娠(子宮外妊娠)の経験がある方は挿入できません。
ミレーナ装着後の注意点
・不正出血
ミレーナ挿入後の数ヵ月間、生理以外の出血がみられることがありますが、時間の経過とともに減少します。
また、黄体ホルモンの作用により子宮内膜が薄くなるため、生理の回数が減り、約20%の人では生理が来なくなります。
ミレーナを入れた後、前回の生理から6週間以内に生理がこない場合や、吐き気、嘔吐などのつわりのような症状があれば受診してください。
・腹痛
※それほど強い腹痛ではありませんが、違和感のような症状が数か月続くこともあります。
・卵巣のう胞
※ほとんどの場合は無症状で、通常2~3ヵ月のうちに自然に消失します。まれに消失しないことがあり、腹部膨満感や下腹部痛が続くこともあります。
上記以外に非常に稀なものとして以下のものが挙げられます。
・ミレーナの脱出
※ミレーナが気付かぬうちに抜けてしまうことがあります。
・ミレーナの穿孔
※ミレーナが子宮の壁に入り込んでしまうことがあります。
・骨盤内炎症性疾患
※感染を起こして強い腹痛から入院が必要になる事があります。
・異所性妊娠(子宮外妊娠)
※受精卵が子宮の外で発育してしまい入院が必要になります。